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おわりに

"大人"と、そうでない者

われわれは、例えば、時間やお金、他者との関係といったものが制約になり、本当にやりたいことをできず、本当に欲しいものを手に入れられない。だから、先に制約を想定して、一定の範囲内で希望を持つ。心から作りたいものを作るのではなく、作れるものを作る。心から買いたいものを買うのではなく、買えるものを買う。

時間やお金を無駄にしたくない。他者から悪く思われたくない。だから、われわれは何をするにしても、何を買うにしても、あれやこれや考え、あれやこれや検索する。ウェブブック『新・ブランド論』で述べたように、世の人々がどう評価するか、どんなイメージを持っているかを気にする。それらの情報や、それらの情報を集めることに気を取られ、われわれは、行為自体、もの自体と純粋に向き合えない。

だが、われわれは最初からそんな "大人" だったわけではない。物心がつく前の子どもは、時間という概念も、お金という概念も持たない。何かにとらわれることなく、自由に希望を持つ。そして、他の一切のことを考えず、やりたいことや欲しいものと純粋に向き合う。

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宝の場所

ギルド系アトリエの人々は、何ら制約にとらわれることなく、自由に、本当に作りたい靴、本当に履きたい靴を思い描く。そして、ただ優れた靴を作ること、ただ優れた靴を履くことだけに、純粋に向き合っている。彼らは、幼い子どものようである。

本書は、ここまでで原稿用紙90枚分の分量である。「ここには何があるんだろう」という純粋な好奇心を頼りにする者だけが、新たにギルドの存在を知った。今のあなたもまた、幼い子どものようである。

"大人" にならない者達がギルドを作り、"大人" にならない者達がギルドを知るのだ。

ギルドの人々、そして、ここにいる人々だけが、真に最高品質の靴の所在を知っている。この状態を想像すると、懐かしく感じるだろう。

子どもの頃、秘密基地を作った。 もちろん、その場所は大人には内緒だ。 その場所には、仲間だけを連れていく。 そして、そこにみんなの宝物を集めていく。

大人が辿り着けない場所、地図に載っていない秘密基地に宝がある。それと同様、"大人" が辿り着けない場所、検索できない靴店に、真に最高品質の靴があるのだ。

ギルド系アトリエ文:Tohru Shiina 編訳:Kohki Kazami

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