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リソース採用時の非効率性

あなたは「カレーライスを2人分作るから、食材を5,000円分買って来て欲しい」とおつかいを頼まれた。

予算が5,000円あれば、それなりに良い食材を厳選できるはずだ。だが、プロの料理人があなたが買ってきた食材を見れば、「5,000円あれば、もっと良い食材を選べるのに」と感じるかもしれない。あるいは、全てのスーパーや肉屋、八百屋の商品を見て回れば、もっと良い食材を選べるかもしれない。さらには、固形のルーを買うのではなくスパイスを買うことを考えれば(ルーを、その原材料であるスパイスの集合と見ていれば)もっとレベルの高いカレーが作れるかもしれない。

すなわち、選ぶ人の能力の不十分性、かける時間や手間の不十分性、食材の認識方法の不適切性により、最良の食材を買うことができない。つまり、食材の厳選レベルが低下するのだ。

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以上のことは、靴のリソースを採用する際にも当てはまる。つまり、諸々の非効率的な事象によって、リソースの厳選レベルが低下する。

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技術系リソース採用時の非効率的事象の例

あるメーカーは、製造原価予算から、釣り込みの技術リソース獲得のコストを毎月30万円と設定した。すなわち、釣り込みに使うマシンの減価償却費と、その機械を使って作業する工員の労務費の合計が一月あたり30万円になっている。

ここで、同じ減価償却費でもっと良いマシンを用意でき、同じ労務費でもっと腕の良い工員を雇用できる場合。同じ30万円のコストをかけながら、釣り込み技術のレベルを、例えば能力Eから能力Dにレベルアップできる。だが、現実には能力Eに留まっている。

これは、例えば以下のような事象によって生じる。

  • リソース採用の決定権を持つ管理者が、もっと良いマシンやもっと腕の良い工員の存在を認識していない。
  • 新しいマシンや工員を探して契約するための資金がない、あるいは、そのために時間や手間をかけられない。
  • 既に取引しているマシンの納入業者や現在の工員と縁故がある。

材料系リソース採用時の非効率的事象の例

あるメーカーは、製造原価予算から、レザーリソースの獲得に1足あたり10,000円のコストをかけることにした。このメーカーは、本来なら同じ金額で能力Dのレザーを獲得できるのに、能力Eのレザーを獲得している。

これは、例えば以下のような事象によって生じる。

  • リソース採用の決定権を持つ管理者が、同じコストで、もっと良いレザーが獲得できることを認識していない。
  • タンナーと売買契約を結ぶ際、交渉能力が乏しかった。
  • 自社の要求するリードタイムや購入量に対応できるタンナーが限られた。 (リードタイムや購入量を気にしなければ、他のタンナーとも契約できた。)
  • 長年取引しているタンナーであるため、その縁故を守るべく、他のタンナーと契約できない。

また仮に、タンナーと売買契約を結ぶのではなく、タンナーを垂直統合してレザーを自社で生産すれば、同じコストのままで、よりハイレベルなレザーが手に入るかもしれない。

つまり、レザーリソースを原皮リソースと革製造の技術リソースに細分化して認識した上で、原皮のリソースに幾ら、革製造の技術リソースに幾らという具合にコストをかければ、もっと良いレザーが得られる可能性があるということだ。カレーのルーを購入するのではなく、ルーを細分化して認識し、スパイスからルーを作ることを考えれば、同じコストでよりハイレベルなカレーを作れるのと同じだ。

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非効率的事象の一般化

1)非効率性の認識不足

実例

  • 管理者が、同じコストで、もっと良いマシン、もっと良い工員、もっと良いレザーが手に入ることを認識していない。

2)追加的な費用・手間・時間等(スイッチングコスト)をかけられない。

スイッチングコストの例

  • 他のマシンや他の工員を採用するための初期費用(金銭としてのスイッチングコスト)
  • 新たにマシン、工員、タンナーを探して、交渉する時間や手間(時間、手間としてのスイッチングコスト)
  • 縁故があるから他のマシン、他の工員、他のレザーを採用できない。(関係解消等の手間としてのスイッチングコスト)

3)リソースの認識方法が不適切

実例

  • レザーリソースを、原皮のリソースと革製造の技術のリソースに細分化して認識していない。
  • リソースの認識方法が不適切なら、非効率的な事象を認識できず、非効率性が存在する。非効率的事象を認識していても、スイッチングコストが大きく、それに対処できなければ、非効率性が存在し続ける。
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実行可能最高レベルと実行レベルとの差異

以上で紹介したように、諸々の非効率的な事象(非効率性)によって、本来獲得できたはずのリソースよりも劣ったリソースを獲得することになる。すなわち、リソースの厳選レベルが低下している。

この低下分が、実行可能最高レベルと、実行レベル(メーカーが現実に実行しているリソースの厳選レベル)との差異である。反対に言えば、全てが効率的である場合、メーカーは実行可能最高レベルを現実に実行できる。 実行可能最高レベル・実行レベル

【補足】"効率的" という言葉からは、悪い印象を受けるかもしれない。「有名ブランドのメーカーが効率化を進めた結果、高級靴の品質が低下した」と言われているからだ。効率化とはムダを省くことだが、何を第一の目的としてムダを省くのかが重要である。コスト削減のためにムダを省くのであれば、効率化は品質に対してネガティブかもしれない。だが、品質向上のためにムダを省くのであれば、効率化は品質に対してポジティブである。 品質ブーストとしての効率化

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規模と非効率性

規模が大きくなる程、組織は複雑になるため、管理者は、非効率的事象を認識するのが困難になる。⇒1)非効率性の認識不足

そして、取引相手の種類・取引量・契約の規模が大きくなり、スイッチングコストが大きくなる。⇒2)追加的な費用・手間・時間等(スイッチングコスト)をかけられない。

また、リソースを細分化すると、さらに組織が複雑になったり、取引相手の種類や取引量が増えるため、リソースを細分化して認識しにくい。⇒3)リソースの認識方法が不適切

つまり、規模が大きくなる程、非効率性が大きくなるのだ。 非効率的事象の一般化

その一方、スケールメリットによっては、同じコストで、よりレベルの高いリソースを獲得できる。スケールメリットの一例として、工員が同じ作業を繰り返すことによる作業能力の向上がある。つまり、マシンの減価償却費や労務費は一定のまま、技術リソースのランクが上がる。他の例としては、材料を購入する時に、大量購入する程、単価が安くなることが挙げられる。この場合、同じコストをかけながら、よりレベルの高い材料を獲得できる。

すなわち、規模が大きくなる程、非効率性が大きくなり、リソース厳選レベルが低下するが、スケールメリットによっては、リソース厳選レベルを改善できる。

最後に、リソース採用時の非効率性を改めて定義しておく。

リソース採用時の非効率性」とは、リソース採用において、非効率性があることを認識していないことや、仮に認識していたとしても、それを是正する追加的な費用・手間・時間等を掛けられないことによって、リソースの厳選レベルが低下することを言う。

また、リソースの認識方法が不適切である場合は、非効率性の認識不足に繋がる。

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各リソース厳選レベルの定義 ②

以上の議論を踏まえ、各リソース厳選レベルを、改めて定義する。

実行レベル:靴メーカー・工房が、現実に実行しているリソースの厳選レベル。 実行可能最高レベル:制限下で、完全効率的にリソースを採用できた場合のリソース厳選レベル。 理論最高レベル:無制限下で、完全効率的にリソースを採用できた場合のリソース厳選レベル。

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