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リソースの厳選とは

リソースとリソースの細分化

靴を作るために必要なリソースとして主なものは、レザーリソース、生産技術リソースである。レザーリソースは、例えば、原皮リソース、革製造の技術リソースに細分化できる。さらには、原皮リソースは、子牛の生育のための土地リソースや飼料リソース等に細分化できる。生産技術リソースは、例えば、型紙の制作・設計の技術リソース、カービング技術のリソース・縫製技術のリソース・釣り込み技術のリソース等に細分化できる。

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レザーリソースや原皮リソース等をまとめて「材料系リソース」と呼ぶことにする。材料系リソースは、その獲得のためのコストが、原価計算上、材料費としてカウントされるリソースである。そして、革製造の技術リソースや靴の生産技術リソース等を「技術系リソース」と呼ぶことにする。技術系リソースは、その獲得のためのコストが、原価計算上、機械・設備の減価償却費もしくは工員の労務費としてカウントされるリソースである。(靴を生産するための技術は、機械が実行することもあれば、人の手が実行することもある。例えば、釣り込みを機械が行うこともあれば、手作業で行うこともある。)

前章において、以下のように述べた。

革靴の質を決めるポイントを大雑把に区切る。原皮生産においては、気候、食糧、子牛へのストレス、年齢、保存方法など。革製造においては、設備の能力、薬剤、各工程の作業時間、各工程の技術など。革靴生産においては、ラスト、パターン、各工程の技術など。

高品質を追求するほど、以上の各ポイントがさらに細分化され、その全てで高得点を追求することになる。すると、あらゆる種類(例えば、土地・材料・技術・設備等)のリソースについて、より上位のリソースを選択することになる。

「ポイントを細分化して、その全てて高得点を追求する」とは、リソースをより下の階層へと細分化して認識し、その上で、全種類のリソースにおいて、より上位のものを求めることを意味する。なお、リソースをどれほど細分化して認識しているかは、メーカーによって異なる。例えば、一般的なメーカーは、レザーリソースを原皮リソースや革製造の技術リソースに細分化せず、レザーリソースとしてまとめて認識している。

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リソースの能力とキャパシティ

まず、以下のように定義する。

リソースの能力:そのリソースを用いて生産する完成品の品質を上げる力

いわゆる高級靴(目安として、クロケット&ジョーンズのハンドグレードライン以上に質が高い靴をイメージして欲しい)の生産において。リソースの能力が高い程、世界に存在する実質的な量が小さい。したがって、実質的なキャパシティが小さい。世界に存在する実質的な量・実質的なキャパシティが小さい程、そのリソースの能力が高い。

※「実質的な」としている理由は、後述する。

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以上の反比例の関係は、世のあらゆるリソースにおいて必ず当てはまる訳ではない。いわゆる高級靴は、世の中に存在する靴の上位0.01%程度である。もっと下位の靴で、それが工業製品的に作られるものなら、そのリソースの能力とキャパシティは上記の反比例関係にない。

工業製品のリソースは、能力が高い程キャパシティが大きいこともありうる。例えば、パソコンを構成するCPUのリソースは、IntelCorei9だろうがCorei3だろうが、存在量に相違がない。ほぼ需要と正比例して生産量(すなわち存在量)が変わる。仮にも能力の高いCorei9の方が売れるなら、Corei9の存在量が増大するのだ。むしろ、能力が低すぎれば、需要が無くなり、キャパシティがゼロになる。

しかしながら、殊に、高級靴の生産においては、リソースの能力とその実質的な存在量・実質的なキャパシティは反比例する。自然由来の限られた材料を用い、限られた者の技術に頼るためだ。質が高い原皮の量には限りがあり、腕の良い職人の労働量には限りがある。

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キャパシティと代替可能性

なお、以下のように考えるのは間違いである。

あるレザー(レザー3としよう)は、存在量(生産数)が少ない。したがって、能力が高い。

レザー3が、下の図で能力Eのグループに分類される場合、同等能力のレザーは無数にある。つまり、レザー3は、他のレザーによって代替可能なので、実質的には存在量が多い。すなわち、実質的にはキャパシティが大きい。

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この業界では、例えばある素材について、その希少性が高いため、能力も高い(この素材によって品質が上がっている)と印象づけることが多々ある。だが、代替可能性が高ければ、実質的には希少ではなく、ありふれている。そして、その能力は低い。

すなわち、前節冒頭の説明における「実質的な存在量」「実質的なキャパシティ」は、代替可能性を加味した上での量およびキャパシティを意味する。これを踏まえると、以下のように言える。

高級靴生産においては...

リソースの能力が高い程、存在量および代替可能性が小さく、キャパシティ(利用可能量)が小さい。また、リソースの能力が低い程、存在量あるいは代替可能性が高く、キャパシティ(利用可能量)が大きい。

存在量および代替可能性が小さく、キャパシティ(利用可能量)が小さい程、そのリソースの能力が高い。また、存在量あるいは代替可能性が大きく、キャパシティ(利用可能量)が大きい程、そのリソースの能力が低い。

以上の関係を、本書では「能力とキャパシティの反比例関係」と呼ぶことにする。

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リソースを厳選する、とは?

同じ量のリソースを採用する場合でも、その採り方は様々だ。能力A,Bのグループからリソースを採用することも、能力Eのグループからリソースを採用することもできる。

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本書では、どれほど能力の高いリソースグループからリソースを採用しているかの度合いを「リソースの厳選レベル」と定義する。すなわち、上のスライドでは、右側に位置するリソースの採り方程、リソースの厳選レベルが高い。

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