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はじめに

喩えるならケーニグセグ

メーカーは様々な制約下で生産するが、その制約の大きさが製品の品質を決定しているとも言える。靴作りにおいても同様だが、あらゆる制約を取り払って生産し、高品質を実現する稀有な靴ブランドがある。それが「ギルド系アトリエ」と呼ばれる者である。

彼らのような者が存在すること自体は、メディアでも触れられてきた。だが、それは噂話の域を出ず、彼らについて体系的に語られたことはない。第一に、彼らは秘密結社のような運営形態を取り、実態をオープンにしてこなかったからだ。第二に、彼らの製品は高額であり、一般消費者の購買検討対象になり得なかったからだ。

したがって、彼らは真に最高品質の靴を作っているにもかかわらず、「最高の靴ブランドは何か」という問いの答えとして、彼らが挙がることはなかった。「最高のクルマは何か」という問いの答えとして、ケーニグセグが挙がることがないように。

高級靴ブランドをロールスロイスやベントレーに喩えることは多いが、それに倣って、ギルド系アトリエを自動車メーカーに喩えるなら、ケーニグセグやブガッティである。

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ギルド改革に伴って

ギルド系アトリエは、高品質の維持、ひいては組織の存続のため、秘密結社のような運営形態を取り、実態をオープンにしてこなかった。

だが、2020年のパンデミックを経て、この体制が危険視されるようになった。一部のアトリエは、履き手を失ったまま、彼らに代わる履き手を得られず、閉業に至った。存続のための体制は、むしろ消滅の原因になった。

現在、いくつかのギルド系アトリエは、完全にクローズドな組織運営から、半クローズド・半オープンな組織運営へ移行しつつある。ギースバッハに参加するアトリエも、当スタジオを通じ、一部の作品を一般公開することに決めた。 PROJECT

われわれは、その一般公開に伴い、本書でギルド系アトリエの実態を解説することにした。ただし、一般的な事業者における企業秘密のようなものを保護する観点から、依然として、その全てをオープンにすることはできない。オープンにできること、そうでないことを見極めて解説する。

ギルド系アトリエ文:Tohru Shiina 編訳:Kohki Kazami

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