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革靴の意義

消えない価値、自分だけの価値

異なる可能性(個体差)を持った複数の中から一足を選ぶ。それに対し、数年数十年の間、個別具体的なケアを繰り返す。その結果としての一足は、唯一無二である。同じものが存在しないどころか、自分自身が同じものを再現することさえも不可能である。革靴を選び、扱うこととは、すなわち個性の付与だ。

革靴をステータス品として捉え、価値を測るなら、情報の "大海" には同じブランドの靴が大量に溢れているため、その価値は瞬時に消滅する。(相対化の流れに飲まれる)だが、履き手によって付与される個性で捉え、価値を測るなら、"大海" にも同じ個性を持つ靴はないため、その価値は消えない。

革靴をブランド名やモデル名、素材やパターンの種類を組み合わせた記号として語るなら、大勢の他者と同じ靴を履くことになる。(画一化の流れに飲まれる)だが、履き手によって付与される個性で語るなら、他の誰も履いていない靴を履くことになる。

すなわち、本書で示した考えを持って革靴と関わる時、革靴という趣味は、相対的な価値が消滅する時代、画一化の時代において極めて意義深いものとなるのだ。

誰しもが、少なからずステータス品や人気アイテム(画一化の渦中にあるもの)への欲求を持つ。それも必要なことだ。ステータスの競争に参加したり、話題を共有することで、われわれは成長し、他者と繋がるからだ。

だが、この欲求が過度になれば、本当は大切でないものを追ってしまい、本当に大切なものを逃してしまう。そして現代では、そんな状況に陥りやすい。

「もっと他に大切なものがあるはずだ」

もしあなたが、この時代の流れの中で立ち止まり、そう感じているのであれば...

ぜひ、この世界へ足を踏み入れて欲しい。革靴を選び、育て、消えない価値、自分だけの価値を創造するのだ。本当に大切なものをみつけられるはずだ。

『革靴の意義』文:Tohru Shiina 編訳:Kohki Kazami

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