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新たな文化

靴好き達の言葉

たとえ安価なものであっても、審美眼に優れた者が選別し、長年丁寧なケアを施した結果、エイジングによる独特の美を帯びた靴であれば、強く惹かれる。

本当に良い靴は、限られた者しか履けない。本当に良い靴かどうかは、価格やブランドではなく、履き手によって加えられてきた手入れや、その手入れの根本にある考えで決まるからだ。

以上は私の友人達の言葉だが、これまで多くの人間が同様のことを語ってきた。こういった言葉は、革靴には、履き手によって新たな価値が付与されていくことを示している。革靴というものは、新品時点では未完成である。

3つの差と新たな文化

第一の差は、モデル間の差だ。例えば、シャンボードとゴルフの差である。第二の差は、同モデルの個体間の差だ。つまり、あなたが買った新品のシャンボードと、私が買った新品のシャンボードの差である。そして第三の差は、履き手の取り扱いの巧拙によって生まれる差だ。これら3つの差を優位に取ることで、革靴に新たな価値を蓄積させ、本当に良い靴を生み出せる。

世の人々は、こういった考えを聞いても腑に落ちないだろう。現状では、革靴の価値の低下を防ぐ方法や、価値を上げる方法が広く認知されておらず、したがって世の中のほぼ全ての靴が、どんどん価値を下げていく。それゆえ「革靴というものは、新品からどんどん価値が下がるものだ」と信じられているからだ。

かつては、ジーンズも新品からどんどん価値が下がるものだと信じられていた。だが、正しい選び方やケア方法が広く認知された結果、美しくエイジングされたジーンズが増えた。その結果、「ジーンズの価値は上昇しうる」と信じられるようになった。岡山県では漁師やシェフらが一年間履いたジーンズを販売するイベントが開催され、その取引額は新品の2倍以上になった。

日本の現状において「革靴の価値は上昇しうる」という考えは新奇である。だが、ジーンズの実例のように、この状況は変えられるはずだ。そのための一歩として、本書では、革靴の価値を上昇させるための考え方を示す。その上で、革靴という趣味の意義を示したい。

『革靴の意義』文:Tohru Shiina 編訳:Kohki Kazami

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